セブ島 旅行記


【セブ島レポートAUGUST-14 卒業生の船員R君の家へ】
 

    


さてマンダウエ市サイエンス中学校から北東へ向かい、
今度は卒業生で現在ノルウェー船籍の船員として働いている R君の家におじゃまする事に。

しかし途中まで本城水道工業所のトラックが前をずっと走っていたので、雰囲気は日本であった。


   

      しかも株式会社だ。トライシクルとナンバーが見えるので、かろうじてセブである。



R君は立派な成績で大学を卒業して船会社に就職、半年から一年は船の上だが丁度セブに帰って来ているという。最近結婚して子供も出来て、ローンで建築中だった中古の家も購入してスクワーターエリアから脱出した成功者である。


    

 
R君の家ではマンゴのアイスクリームと飲み物をご馳走になった。権兵衛さんも久しぶりにR君と会ったらしく話に花が咲いていたが、英語だったので全然解らなかった(とほほ)。玄関ドアを入るとキッチンと居間、二階に寝室という質素な家だが、スクワーター地区に比べたら、もう天井が塗られていなくても壁のブロックが剥き出しのままであろうと構いはしない。ローンさえ払い終われば自分の家である、家族にも、生まれた子供にも、風雨をしのげて「追い出される事のない場所」を残せるのである。


             

 
R君の家は通りから車一台がギリギリ通れる道を入った一番奥で、
近所の家にはバナナや椰子の木が自生して実を付けていた。

どこの家でもニワトリを飼って大事な栄養源である卵を自給自足している。
 

        


さてR君の家をあとにして、再びマンダウエ市から橋を渡った私達は
マクタン島はラプラプ市にあるPajo National High School(国立パホ中学校)を訪問した。


     


校長先生に日本から視察に来た旨を話し、奨学生にエンピツを渡して将来の志望を聞く。


    


子供達も厳しい経済状態の中で頑張っているのだが、学校もスペースや資金が不足している為に国のお金だけでは生徒に充分な教育をしてあげる事が大変に難しい。それでも学校へ来ることが出来る生徒はまだ幸運な方で、貧困のために学校へ来られず英語も出来ない子供も多く、その子達の将来は親と同じスクワーターのままで一生を終えるしかないのである。
 

    


日も暮れて、幾分涼しくなったマクタン島から渋滞を抜けてセブ市のホテルに帰ってひとまず休憩。


    


さて、貧困層と裕福層との差が極端な国である。
今宵は地元の経済を握る華僑の人々も来店するというLumpia House ルンピア・ハウス(中華レストラン)で食事をしてみましょうという事になった。
 
8時を過ぎて月曜日という事もあってか店は空いていた。
この店で権兵衛さんがお勧めのメニューは、
「海燕入りスープ」「ラプラプの清蒸しょうゆ風味」「エビチリ」「酢豚」
「牛肉とブロッコリーの炒め物」「上海チャーハン」である。


    

 
ボーイさんが↑水槽に泳いでいる元気の良いラプラプを網ですくってバケツに入れテーブルに持ってきて、
「これを料理して良いですか?」と確認してからキッチンに持っていった。

白身魚には白ワインと思ったのだが、
権兵衛氏曰く「このラプラプの清蒸しょうゆ風味には赤ワインが合う」との事。

その他水槽にはラプラプの他に地元で何と呼ばれているか判らないが
大きさから「セイゴ」と思われる魚と、水槽の下には蟹と鰻がたくさん居た。
 
 
権兵衛さんのブログ(http://blogs.yahoo.co.jp/gombiedon/30699019.html?p=1&pm=l)にも書かれているが、学生の家庭(貧困家庭)50世帯の食生活を調査したところ、父母子供4人で合計6人の標準家庭の
食費支出は 「1日当たり平均220円弱」 であるそうだ。


1日220円で1ヵ月6,600円。
収入は調査時1ヵ月11,000円程度でエンゲル係数(一家庭の全消費支出に占める食費の割合)が
60%である。

通常エンゲル係数20%未満は「かなりユトリがあるレベル」、
25%未満で「世界的に楽なレベル」、
30%未満で「ややゆとりがある」、
50%未満は「やっと生活ができるレベル」とされている。

そして60%は・・・   「規格外」 。


この国は5%未満の富裕層が国の資産の70〜80%以上を握っている。
そして10%強のアッパーミドルクラス。あとの90%以上の国民が、
残り20%程度の非常に限られたスペースに窮屈に押し込められ、労働者の標準的月収は日本円にして12,000円あるかなし。
 
物価が違うからと思われるかも知れないが、電気や水道代・ガソリン代・電話代などは日本とあまり変わらない。ガソリン代などは一番安いレギュラーでも日本円で110円もする。
 
つまり今の日本でもって家族6人が1ヶ月1万2千円で暮らしなさいよ・・・と言っている事と同じなのである。
日本のテレビ番組で「1ヶ月1万円生活」とかやっていたが、テレビでは1人で1万円生活である、こちらは家族6人なんで「1ヶ月2千円生活」なのだ。しかもテレビ番組と違って1ヶ月では終わらない2000円生活、貧困から抜け出せないでいれば一生2000円生活のままである。
 
そのエンゲル係数60%未満という規格外レベルの生活の中で、
子供達を学校に送ろうと努力している親は、心から尊敬に値する。
 

   

 
ラプラプやtangigueなどは美味しい魚として有名だが、こららはキロあたり150ペソ以上もするので庶民の口には入らない。たとえばtuloyというキロ30ペソくらいの魚が買えるくらいだが、皮肉にも新鮮なtuloyの塩焼きはラプラプよりも旨いらしい。

日本でも、昔、イワシやメザシが庶民の重要なタンパク源であったのと同じである。しかし貧困層の家庭ではそのメザシも買えず、とにかくエネルギーを補給しなければと「豚の脂身をココナツオイルで揚げて、塩をまぶし、ご飯と一緒に食べる事も多いのだそうだ。
 

もっと話を続けたかったが食事も済んでしまったのでLumpia Houseを出てタクシーを捕まえて、
昨日行ったトップスより少し下の高台にあるMr. A(ミスターA)に行き、展望クワハウスで飲む事にした。


     


権兵衛さんが一人でカナダに行き英語の勉強をしていて、都合で日本に帰国した時にセブのNGO活動に携わる事になった経緯や、教育の大切さ、そしてこの国のキリスト教会の事、この国は人口の80%以上がクリスチャンという典型的なキリスト教国家。次にイスラム教、仏教も少しは有る様である。
 

この国はローマカトリックが主流だが、特にセブでは幼きイエスキリスト「サント ニーニョ」の信仰が盛んである。そういえばタクシーの中などにも、サントニーニョの小さい像が飾られていたり、私がセブに着いた夜も、権兵衛さんの家の近くのミニ教会でマス(ミサ)をする人々を見かけ、街の人出は極端に少なかった。
 

             


しかしこの国は、カトリック教会をガス抜きにして、庶民を抑えつけてきたフシがある。

スペインの植民地政策によって、特に宗教による思想教育・統制で人間の尊厳を奪って
コントロールする事を前提にこの国はデザインされた訳で、彼らから自由を奪い、威力により脅迫し、
多くを与えない(生かさぬように殺さぬように)。そして最後にガス抜きの為に教会へ入り浸る事を奨励し、
賞賛し、彼らがどうあれ、教会へ行って信心と神への忠誠を誓う事を
「良いクリスチャン」(良い国民)と言う価値観を植えつけられている歴史が現在も息づいている。
 
゜自由と共に存在する責任と言うものを理解し、政府も教会も庶民も各自がそれを背負う気概を持たなければ未来は無いんです。自分の蒔いた種は自分で刈るというのは絶対の真理であるのに、何故か有耶無耶にされてしまっている」そう権兵衛さんはこの国の現状を嘆く。しかし、権兵衛さんがこの国の人々が好きなのであろう事は、熱く語るその表情からハッキリ読み取れた。
 
さらに話は時間と空間が融合して誕生した「宇宙」や「無」について、そして様々な宗教や物理学にも共通する「真理」という「法則」に及び、それらに繋がる「式」というものと、釈迦についてにまで及び、私のシナップスもそろそろ混線してきた。
 
ふと気が付くと、周りに客はいなくなり、他のテーブルは全部片づけられて我々のテーブルだけになり、
隣のテーブルでボーイが寝ていた。しかも熟睡、他のボーイが揺さぶってもなかなか起きなかった。
 

     


それもそのはず、時計を見たらなんと1時近くになっていたので、こりゃタクシーは・・・と思ったが、

ちゃ〜んと待っていた。

考えてみたら、月曜日の深夜だし、いつ客を拾えるか判らない市内より、
絶対に帰りにタクシーに乗るであろう客を降ろしたら、エンジンを切ってそのまま待っていた方が
経済的で確実だ。いやいやお仕事ご苦労様です。私はチップをはずんだ、20ペソ。(ケチ)
 
ホテルについて、シャワーを浴びたらすでに2時を回っていた。

そのままベッドへ倒れ込み、意識を失い、眠るように死んでいた。

・・もとい、死んだ様に眠っていた。
 


           【セブ島レポート2006−AUGUST-15 セブ島 郡部訪問】


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